2010年1月12日火曜日

ジャーナリスト養成大学院

今、社会人の大学院進学が本当に多いですよね。仕事をしながら通うことができるようになっていることが大きな要因でしょうか。

学びたいという気持をいくつになっても持ち続けているっていうのはいいことですよね。

もちろん、仕事に打ち込むこともいい事ですが。

特に、現役でその仕事をしている人がもう一度学ぶってのはなかなか出来ることではないですからね。

◆ジャーナリスト養成:大学に広がる実践的教育(12月28日 毎日新聞) 

◇米国、学内拠点の調査報道に注目

 ジャーナリスト養成を目的とした専門的な大学教育が広がり始めている。早稲田大と龍谷大で08年度、慶応大が今年度、修士課程(2年)を開設。日 本大は来春、開設予定で、専修大は「日本初」とうたって文学部の学科を再編する。学生に実践的な取材方法を身につけさせるだけでなく、現役記者や企業・行 政の広報担当者に専門知識を習得させる狙いもある。国民の知る権利を支えるジャーナリズムが深まり、広がっていく潮流として注目が集まっている。

 ■学生記者が特ダネ

 「本人が話したがらないなら、事前に調べたうえで『こうですね』と確認を取るというやり方もある」「電話で応対した担当者のフルネーム、肩書は聞 いた? 取材相手から『そんなこと言っていない』と言われないようにきちんと聞くこと」「取材相手にオフレコだと言われたとき、どういう表現なら記事にで きると思うか」--。

 今月3日の早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース(Jスクール)の実習科目「調査報道の方法」。6人の学生が取材の進ちょく状況を報 告し、講師の現役記者2人が質問と回答を繰り返す。「記者」として実際に取材し、原稿を書き、ホームページで公表するという内容で、昨年度は“特ダネ”も 生まれた。行政手続法は各省庁が政令や省令を定めるに当たって受け付けた国民からの意見などを公示することを定めているが、厚生労働省など7府省で怠って いた。学生の指摘を受け厚労省は今年2月、「不適切な事案が見られた」と発表した。

 米国では報道機関ではなく、大学を拠点にした調査報道が注目を集めているという。講師の澤康臣・共同通信記者は「日本の大学でも調査報道はやれるはず。今回の特ダネはその一例だ」と話した。

 ■「専門」育成も

 早稲田大のJスクールの定員は各学年40人。政治、経済、国際、社会、文化など多様な専門性に応えるため各分野から約30人の教員が指導に当た る。学生の6~7割は新卒者だが現役記者ら社会人経験者も少なくない。来年3月に修了する第1期生は、新卒者10人のうち7人がメディア関係の内定を取り 付けたという。来年度は博士課程も新設し、今後は報道機関の記者らが短期で統計学の分析方法などを学べるプログラムの設置も検討する。佐藤正志・政治学研 究科長は「大学が蓄積してきた真理を追究する手法は、専門記者の育成に役立つ。この分野のシンクタンクとして、ジャーナリズムの強化に貢献したい」と話 す。

 龍谷大が社会学研究科社会学専攻に設置(08年度)したのは、関西地区では唯一のジャーナリズムコース(社会学コースと合わせて定員10人)だ。 ジャーナリストだけでなく、企業や行政、団体などの広報部門で活躍できる「専門的な知識を有する職業人」の養成を目指す。これまで9人の入学者のうち4人 が、ジャーナリスト志望の中国人留学生だという。

 授業では企業や地方自治体が実際に記者会見で使った発表資料を基に、ニュース性の判断や原稿の書き方を教える。一方、企業の立場から発表のあり方 を考えるトレーニングも行っている。1期生の中には企業広報を希望、大手コンビニに内定した学生がいるという。共同通信や毎日新聞で記者を経験した小黒 純・准教授は「取材する側とされる側は表裏一体だ。知識や理論だけでなく、現場重視の実践的なプログラムで、創造的に対応できる人材を育てていきたい」と 話す。

 ■説得ある論評を

 慶応大は今春、法学研究科修士課程政治学専攻に「ジャーナリズム専修コース」(定員10人)を設けた。「政治に強いジャーナリスト」の養成を目的 とし、半数の学生は2年以上の社会人経験者を想定しているという。初年度は新卒5人が入学した。同コースは政治学専攻の中にあるが、学部生を対象にマスコ ミ入社試験対策など実践的な教育を行ってきた「慶大メディア・コミュニケーション研究所」と、大学院の政治学、憲法・ジャーナリズム論両専門研究の計3者 の上に置いて履修するイメージという。5人のうち1人は報道機関への就職が内定。必要単位を取得すれば2年通わなくても、学位の代わりに「修了証」を発行 するという。

 大石裕・同研究所所長は「インターネットの発達などで一般の人も情報発信できる時代になった。その中で研究者が用いる分析手法を駆使すれば、説得力のある論評ができるようになる。ジャーナリズムは権力チェックが役割だが、まず権力とは何かを学んでほしい」と話す。

 一方、日本大は独立した新聞学研究科(定員10人)として設けるのが特徴だ。日大では法学部に新聞学科があり、研究科の名称も「新聞」にこだわっ た。博士課程の設置も予定している。大井真二教授は「研究者だけでなく、いったんメディア業界に籍を置いた後に改めて勉強したいという社会人の要望にも応 えたい」と話す。定員の半数は社会人を想定し、入学試験は研究計画書、口述試験のみで語学や論文は免除するという。また専門職業人養成の観点から実践活動 を重視し、新聞学研究所(07年設置)と連携したプログラムを構築。中国からの留学生の受け皿となるよう中国メディア論の研究者も起用するという。

 ■選挙特番泊まり込み

 専修大は来年4月に、文学部を再編して日本で初めて名称に明記した「人文・ジャーナリズム学科」(定員90人)を開設する。ジャーナリストをはじ め、公文書館などで調査研究にあたる専門職の「アーキビスト」や学芸員、NPO(非営利組織)スタッフなどの人材養成を目指す。「戦争ジャーナリズム」 「沖縄ジャーナリズム」「メディア判例研究特講」といった、今日的課題をテーマにした講義が特徴だ。

 既に実習も始まり、07年は大統領選最中の韓国の大統領府、08年には沖縄県の嘉手納基地を訪れ、関係者のインタビューを行ったという。今年は、 総選挙の投開票日に合わせて、在京テレビ局の選挙特番の制作現場に泊まり込み、報道現場の舞台裏から歴史的な政権交代を体験した。この冬の課題は「どうし たら新聞はもっと読まれるようになるか」でまさに実践的だ。山田健太・准教授は「現実の社会では一つの専門知識だけでなく、複雑な課題に柔軟に対応できる 能力が求められる。世の中のさまざまな課題に興味を持ち、自分の目で見て考えて発信できる人材を育てたい」と話した。

◇「学び直し」現役記者 在職中も入学できる制度を

 「ジャーナリストとして何かが足りない。自分の軸になるような考え方を身につけなければと思った」。在京の放送局記者の40代女性はそう話す。“学び直し”について彼女に振り返ってもらった。

 大卒後に全国紙に入社。経済部に配属されたが9年目に退職して東京大大学院社会情報研究所(当時)に入学した。ジェンダー論や少数民族の立場から みるジャーナリズムがどんなものであるかを研究した。「客観報道とは言っても、ジャーナリストの主観はどうしても入ってしまうことが分かった。では、どう すればいいのか、今も考えている」と明かす。

 卒業後、再びジャーナリズムの現場に。放送記者に転身して約10年がたつ。「困難な問題に直面した時、一歩引いてデータはどうなっているのか、全体を眺めることができるようになった。大学院で学んだお陰だと思う」

 元教員やシンクタンク職員、ジャーナリスト志望の留学生ら学友との人脈はいまでも生きている。「大学院で学んだことをどう生かすか、しっかり決め てから進学を決めるべきだ。また、当時は会社を辞めてからでないと入学できない大学院も多かった。会社に在職しながらでも学べる制度が整備されるかが、今 後のジャーナリスト教育が普及するカギになる」と話す。