2009年2月15日日曜日

学費で釣る?

実績、知名度等が低い大学院の現場は大荒れなようですね。
学びたくても金銭面で学べない優秀な人はいると思いますよ。
ただ、結構多くの人が授業料減額、免除となっていると、安さで学生を集めている印象になり、あまり良い感じしないんですけど・・・
それにしても、個室自習室にノートパソコン、家具つき寮なんて学生には贅沢過ぎる環境ですね。

◆法科大学院(3)学費支援 揺れる現場(2009年2月13日 読売新聞)

 法科大学院は学生をどう支援しているのか。
 定期試験が終わったばかりの今月4日、山梨学院大学法科大学院(甲府市)の自習室は学生で埋まっていた。1学年の定員が40、現学生数96人の同大学院では、24時間使える図書室に学生の人数分の自習机が確保されている。
 自習机のうち40は個室で、最上級生が優先的に使える。ノートパソコンは全員に無償貸与されている。しかも、徒歩3分の場所に家具付き、家賃2万円の寮があり、87人がこの恩恵に預かっている。
 さらに、成績優秀者には、初年度だと150万円になる学費を全額ないし半額免除とする制度がある。現在、全額は31人、半額は29人が対象だ。この学生たちは寮費も免除されている。加えて、大学院修了後も寮や自習室を使える仕組みも用意している。
 赤字は当然だが、「法曹養成で実績がないだけに、当初から、意欲や能力があるのに経済的に環境の厳しい学生を積極的に受け入れたいと考えた」(荒牧重人・法務研究科長)。
 面倒見のよさは、おおむね好評だ。北海道出身で、公務員を辞めて旧司法試験に挑んできた近藤徹さん(40)は「この大学院に入ることが最後のチャンスだと思った」、福岡県出身の下吹越淑子(しもひごしよしこ)さん(35)は「身ひとつで来て、安全な環境で学べるのがありがたい」と語る。「他の奨学金と合わせて経済面の心配はありません。後は自分がどう勉学に打ち込むかです」と東京出身の印南(いんなみ)真吾さん(31)。
 山梨学院では、1年目から「地域社会と法」といった授業を設けるなど、「地域にねざした法曹養成」を意識している。こうした姿勢と学生支援体制とが相まって、全国から集まった学生たちから、「山梨が好きになった」「もし、弁護士として開業するなら、候補地の一つ」という声もあがる。
  ◎
 2009年度から、法学の基本知識がある既修者コースの新入生全員に、入学金を含む学費(151万3000円)を全額免除する――。青山学院大学法科大学院(東京・渋谷)が事実上の学費無償化となる給付奨学金制度の導入を発表したのは昨年6月だった。
 1学年の定員は既修者20、未修者40。大学院には「優秀な既修者に未修者を刺激してほしい」(山崎敏彦・法務研究科長)という思いがあった。しかし、ふたを開けてみると、既修者コースへの志願者そのものが激減した。07年度168人、08年度104人に対し、09年度は17人。
 元々、既修者としての成績を厳格に見る選考をしてきた。合格者は07年度4人、08年度3人。09年度の合格者2人には、山崎研究科長自身も「未修者の手本になってほしい」と期待を伝えたが、入学手続きはされないままだ。
 高額な学費の大学院に、社会人などの幅広い層の学生を集めるには、充実した支援策は欠かせない。一方で、学費のディスカウントには「学生集めのためだ」という批判も出る。
さじ加減は極めて難しい。(中西茂、向井ゆう子)
 学費と奨学金 法科大学院の初年度納付金は国立が一律108万6000円、私立は150~160万円台が多いが、200万円を超える大学もある。2007年度で日本学生支援機構の貸与奨学金を在学生の約6割、約8200人が利用する。大半の大学が独自に学費減免制度や貸与奨学金を設けており、地元弁護士らが奨学金を設けた例もある。

2009年2月14日土曜日

定員割れとプライド

各大学で強い分野というか売りの分野ってありますよね。
法科大学院を設置している大学は70校にも上りますが、法科大学院設置以前の実績というのは何としても守りたいプライドですね。

世間での評価というのは数字ですから、何としても合格率を上げたいと各大学躍起になっていますが、本来の目的・本当の教育とかけ離れないように気を付けてもらいたいですね。

◆法科大学院 (2)数も質も 伝統校の模索(2009年2月12日 読売新聞)

 多数の法曹を輩出してきた伝統校も厳しい競争にさらされている。
 法科大学院の定員数には、各校のプライドがにじむ。東京大、早稲田大、中央大。1学年の定員が最大の300人を数える3校は「ビッグ・ロースクール」と呼ばれる。
 1月の夜。静まりかえった中大の市ヶ谷キャンパス(東京都新宿区)にある法科大学院の教室で、1年生9人が本田宗哉さん(36)の話に聞き入っていた。2005年度の修了生で、1年前に弁護士登録したばかり。実務講師として後進の指導にあたる。
 中大は、日本の法曹の5分の1、弁護士の4分の1を生み出してきた。そんな伝統校の売り物は、本田さんのような先輩12人が、課外で1年生の学修を支援する「フォローアップ演習」だ。
 中大は、法律の基本知識がある既修者コース200人、未修者コース100人を募集している。演習の対象である未修者の1年生の8割が受講。2週間に1回、2時間ずつ、1年生で学ぶ「民法」「刑法」など基本科目について、授業の進度に合わせ、疑問に答えたり、復習したりする。
 実際に新司法試験を突破した先輩の話を聞けるチャンスでもある。本田さんも演習後、学生と近くの中華料理店で懇談するのが恒例だ。学生の悩みや不安も受け止める。
 「勉強の仕方で相談にも乗ってもらえるし、法曹として活躍する話が聞けて励みになる」と受講者の白木規章さん(31)。本田さんも「母校に恩返しがしたかった。学生の姿を見て、仕事でくじけそうな時に、初心を思い出し勇気づけられる事もある」と言う。
 ◎
 早大法科大学院の入試は特徴的だ。書類選考の後、「携帯電話の学校持ち込み」「離婚調停」といった大学側が与える場面について、受験生一人一人と教授2人が議論する。法律知識は一切問わず、コミュニケーション能力と論理的思考力を見る。
 既修、未修ごとに定員を定めて募集していない。合格してから学内の認定試験で既修と判定されれば2年で卒業できるが、現実にはほとんどの学生が未修者だった。
 その早大が昨年12月、2011年度から既修者コースを設けると発表し、他大学を驚かせた。既修者を定員全体の半分程度にする。
 未修者コース修了生が初めて受験した07年の新司法試験。早大の合格者は115人で、東大の178人、中大153人に水をあけられた。合格者のうち既修者(浪人生を除く)は8人で、東大では115人、中大では89人が既修者だったのと対照的だった。
 早大の教務主任、古谷修一教授(50)は「一般に流布するのは合格者の数。早稲田は通りにくいと受験生に敬遠されてしまう」と心配する。
 だが、大学が既修者に力を注ぎすぎれば、多様な人材が法曹を目指すという制度の理念が揺らぐ。早大の入試合格者に占める社会人の割合は、04年度35・6%だったが、09年度には14・7%に減った。
 合格者数だけに目を向けると「質」を見失いかねない。
 定員と志願倍率 法科大学院制度が発足した2004年度は68校で総定員は5590。入学者数は定員を177人上回った。しかし、74校になった翌年度以降は定員割れが続き、08年度の総定員5795に対し、入学者は398人少ない。最小規模は定員30で10校ある。04年度に7万2800人だった志願者数は、08年度は3万9555人まで落ち込んだ。

2009年2月13日金曜日

教育と試験は別物?

質の良い教育と試験の点数や合格率が一致していればいいんですが・・・
法科大学院の理想は、より実践的な力を養いつつ、司法試験に合格するということでしたが、合格率が何とも低い。
教育の内容も各大学院によってかなりの差があるようですし、うまくいっているところから学ぶということで少しは改善できるのではないでしょうか?

◆法科大学院(1)理想の教育 合格率の現実(2009年2月11日 読売新聞)

 法科大学院制度が、理想と現実のはざまで揺れている。
 「異議あり! 誘導です」と弁護人席から声が飛ぶ。「記憶を喚起するためです」と検察官席。両者にらみ合いの後、裁判官役が「尋問の方法を変えて下さい」と促した。
 大宮法科大学院(さいたま市)の法廷教室で昨年12月に行われた模擬法廷授業。弁護士の黒田純吉教授(59)が担当する「刑事訴訟実務」の講義だ。2年生10人が参加し、殺人未遂事件の裁判を3者に分かれて熱演した。ホワイトボードに図を描いて位置関係を説明し、おもちゃの包丁で犯行を再現するなど、裁判員制度も意識した。「3日間練習したけど思ったようには進まなかった。もう1回やってみたい」と検察官役の小泉真知子さん(28)。
 1週間前には、婦女暴行事件の公判記録と刑事訴訟法の条文を基に、弁護人がどんな場面で異議申し立てを行っているのか、裁判官がどんな状況で申し立てを認めるのかを学んだ。
 裁判で問われるのは、法律という道具を使って問題を解決する力。授業でも、尋問の「技術」ではなく、実際の裁判で問われる「思考力」を磨こうとしているのだという。

 ◎
 大宮法科大学院は2004年、埼玉県で小学校から大学まで運営する学校法人佐藤栄(さとえ)学園が、第2東京弁護士会(東京都)と提携して開学した。
 合言葉は「弁護士が弁護士を育てる」。法科大学院は、専任教員の3割程度以上を実務経験のある教員とする規定があるが、大宮では、30人のうち18人が現役の弁護士。このうち16人は第2東京弁護士会所属だ。
 法科大学院には、既修者コースと未修者コースがあるが、大宮には、法律の基本知識があって2年で終える既修者コースはなく、基本から3年間学ぶ未修者コースだけだ。社会人向けに夜間コースにも力を入れる。
 法科大学院では、弁護士の指導を受けながら、実際の事件を請け負って訴訟実務を学ぶ科目「リーガル・クリニック」もある。大宮では特に、年間を通して、希望者全員が受講できる。さいたま市で開業していた萩原猛弁護士(53)(教授)が学内に法律事務所を開いて常駐しているからだ。他の教授陣もかかわって実際の訴訟手続きを行っており、刑事事件だけでも、年間約30件のうち3分の1に学生がかかわる。
 こうした特徴から、大宮は「法科大学院の精神を最も忠実に表した大学院だ」と説明する。
 ◎
 だが司法試験合格率という現実がある。1期生97人のうち3年での修了生は64人で、07年には43人が受験し、合格者は6人にとどまった。08年の合格者は16人と伸びたが、合格率では74校ある法科大学院の中で42位だった。
 設立構想時に、第2東京弁護士会長として深くかかわった久保利英明教授(64)は、「大宮の司法試験合格者は学校の成績上位者。授業でしっかりと学ぶことが司法試験対策になっている」と断言する。「未修者コースの修了者は、今年1月に法曹として働き始めたばかり。人間的にも優れた法曹を育てている自信がある。長い目で判断してほしい」 法科大学院協会、文部科学省と法曹三者は、法科大学院の成績と新司法試験の合格率の相関性も調べている。
 腰を据えて理想の行く末を見届けるか、不合格者が積み重なる現実を危機ととらえるか。関係者の意見は分かれる。法科大学院制度が岐路に立たされていることは間違いない。
 既修者コースと未修者コース 憲法、刑事法、民事法など、法学の基礎を修得済みと法科大学院が認定した場合、既修者コースとなる。未修者とコースを分けている大学院が多い。既修者は、法学部出身や旧司法試験対策を行ってきた学生が主で、現状では新試験突破にも有利とされる。

9割が「定員削減含め検討」
 法科大学院は、裁判員制度とともに、政府が推進する司法制度改革の柱の一つ。米国のロースクールをモデルに2004年に誕生した。10年までに新司法試験合格者を3000人に増やすという02年の閣議決定と連動している。
 合格率2~3%の超難関で知られる旧司法試験が知識を問う暗記型だったことの反省から試験内容も見直し、法科大学院には、広く法曹への門戸を開き、法学部以外の出身者や社会人を入学者の3割以上とすることを求めた。
 現在の総定員は74校で5795人にまで膨らんだ。その結果、当初7~8割とされていた修了者の新司法試験合格率は3~4割と低迷を続けている。このため、文部科学省の中央教育審議会は昨年9月、各校の定員削減に言及する報告を、日本弁護士連合会も今年1月、定員削減や統廃合を求める提言をまとめた。文科省が昨年12月までに実施した各校へのヒアリングでは、9割の法科大学院が「定員削減を含めて検討中」と答えた。国立は1~2割減の方向で検討しているとされる。