2009年7月16日木曜日

画期的なシステム!

司法の場でのIT技術の進歩に合わせるように法科大学院でも新たな試みが始まっています。
自分が大学生の時には考えられないような環境になりつつありますね。
鉛筆とノートの持ち込み禁止なんて、信じられませんよ!
技術の進歩はすごいです。

ただ、鉛筆にノートといったアナログの暖かさってなくなってほしくないなぁと思いますね。
必要のないところはアナログでお願いします(^^)v

◆最先端ITで弁護士育成 九州・沖縄の4法科大学院連携(2009年7月13日 朝日新聞)

 スクリーンの中で熱弁をふるう教授がいるのは、数百キロ離れた別の大学。ノートと鉛筆は持ち込み禁止。メモはパソコンで打ち、学生同士の討論もチャット(ネット上の雑談)で行う――。テレビ電話会議システムを使った講義が九州・沖縄の4大学の法科大学院で行われている。IT(情報技術)を活用した遠隔授業で、質が高く、司法過疎を見据えた未来型弁護士の育成を目指す。

■ノート禁止 PCのみ、チャットで討論
 福岡市東区にある九州大法科大学院の教室。約50人の学生の前には、黒板の代わりに三つの大型スクリーンが並ぶ。教授は教室に設置された6台のカメラをパソコンで操り、講義する自分自身の顔、発言する学生、教室の全景を代わる代わるスクリーンに映す。
 同時刻、約300キロ離れた鹿児島市の鹿児島大法科大学院の教室で、学生たちが同じ講義を受けていた。三つのスクリーンには九州大と同じ映像が映る。
 質問しようと鹿児島の学生が手を挙げた。福岡にいる教授が鹿児島のカメラを遠隔操作し、学生が大写しになる。画面を通した専門的な会話が一対一で繰り広げられる。教授と学生のやりとりはスムーズで、気になる時間差は全くなかった。
 スクリーンによる授業は、九州、熊本、鹿児島、琉球の国立4大学の法科大学院が連携して進める最先端の遠隔講義システムだ。NTTに開発を依頼し、1校あたり数千万円をかけて導入した。他の大学院との差異化をはかり、競争に生き残るべく、04年から運用を始めた。運用の中心を担う米田憲市・鹿児島大法科大学院教授は「最先端システムを、法曹を目指す学生が使っている」と胸を張る。
 講義中、学生の手元にあるのはノートパソコンだけ。キーボードに視線を落とさずに文字を打つ「ブラインドタッチ」を身につける目的で、一部授業はノートと鉛筆が持ち込み禁止だ。九州大法科大学院2年の梶田崇雄さんは「大学時代は紙とペンだったので驚いた。むしろ、パソコンは持ち込み禁止、という考えがあったから」と話す。
 この時行われた講義では、学生が班別に行った架空の法律相談を全員で検証した。議論はネットを通じたチャットで行った。教室に響くのはキーボードをたたく音だけだ。パソコンの画面には「俺(おれ)、過去の判例調べてみる」「よろしく~」とのやりとりが。教授もチャットに参加し、「判例を集めたネット上のデータベースを使うとよい」と助言を送った。

■講義の充実など狙う
 遠隔授業の狙いは、大きく二つある。
 一つは、講義内容の充実だ。九州・沖縄の各法科大学院は、学生数や司法試験合格者数で首都圏に及ばない。
 法科大学院創設から5年の鹿児島大で学ぶ学生は30人。この間、司法試験の合格実績は年1人か2人。ITを駆使した授業に、九州大の西山芳喜法科大学院長は「地域の大学力を高めるためには、互いに手をつなぎ合うことが必要」と意義を語る。
 各校の教員が、それぞれの専門分野や得意科目を受け持って複数の大学向けに教えることで、限られた人材で質の高い講義を提供できる。現役弁護士や裁判官など、実務家教員の講義を共有できるのも魅力だ。
 複数の教員が協力して一つの講義を進めることもできる。また、専門分野が重なる教員にとっても、お互い、研究・教育上の刺激になると大学側は期待している。
 もう一つの狙いは、過疎化する地方の法曹界への対応と、ITに強い法律家育成だ。
 離島が多い鹿児島や沖縄では、離島の住民が法律相談をしたくても、弁護士側が「移動時間と費用がかかりすぎる」などの理由で断る場合も少なくない。そんな悩みを抱える住民の声に応えるため、鹿児島大が中心となって、このシステムを推し進め、他大学を巻き込んだ。鹿児島大は、テレビ電話を活用して法律相談を行い、電子データで資料をやりとりするという将来像を描く。また弁護士が少ない過疎地でも、都市部と同じレベルの司法サービスを住民に提供したいと考えている。
 ある司法関係者は「法曹界はIT普及が最も遅れている業界の一つで、資料のやりとりもいまだにファクスが主流。優秀な弁護士だが、パソコンを使いこなせないという人もいる」と指摘する。学生時代からパソコンなどに慣れ親しむことによって、ITに苦手意識を持たず、使いこなせるようになると期待されている。
 一方、裁判員裁判の導入で日本の法廷も口頭主義になりつつある。パソコンに向かうだけでなく、人と直接やりとりするコミュニケーション能力を高めることが法律家には必要だ。
 鹿児島大は、IT講義とあわせ、少人数で行う討論やカウンセリング、模擬裁判などの演習科目を重視する。学生が実際に離島に出向き、相談者と面会してアドバイスをする法律相談実習も必修科目にしている。米田教授は「司法過疎地が多い地方の弁護士には、直接対話はもちろん、ネットを通じたコミュニケーション力が求められている。IT講義で、弁護士になれば必要になる、この二つの技術を磨いてほしい」と話した。