2009年6月23日火曜日

法曹界の人気

法科大学院の定員削減数が具体的に出て来ましたよ。
その前に、74校も法科大学院があることを知らなかったのと、その半分以上で定員割れがおきていたなんて、法曹界の人気のなさが表れてるんですかね。
これからも法科大学院の対策は出てくると思いますが、まずは一つ目の定員削減がどのように影響してくるのか注目が集まりそうです。

◆法科大学院は多すぎるのか 低迷する入学者数、教育の質、司法試験合格率
(2009年6月21日 MSN産経ニュース)

 裁判員制度とともに、司法制度改革の柱として創設された法科大学院が迷走している。
入学者の減少、教育の質、司法試験合格率の低迷…。法科大学院協会幹部の口からでさえ「進路として魅力が低下している」との声がもれる。「このままでは三権の一角が崩れる」との指摘も出始めた。打開策はあるのか-。

 「もっと何とかならないか」…データ公開の衝撃
 「いよいよ文部科学省が“外堀”を埋めてきた」

 地方にある小規模の法科大学院関係者はこう話す。文科省が6月5日、中央教育審議会(中教審)法科大学院特別委員会の会合で示した資料に危機感を強めているのだ。
 資料には74法科大学院別の今年度入学者の定員、志願者、受験者、合格者、入学者、競争倍率などが載っており、その内容は新聞各紙で「倍率2倍未満42校」「志願者総数3万人割れ」「59校定員割れ 13校は5割下回る」などと報じられた。同省がここまで数字を出したのは初めてだ。
 文科省の担当者によれば、「4月にまとめた特別委の報告書でもこれらのデータを公開するよう求めており、当然、各大学院において公表すべき内容」だが、入学者数などの一部データをこれまで公表していなかった法科大学院には衝撃だった。
 実はその4日前、法科大学院協会による全校アンケートで、来年度約700人の定員削減や教育改善策が公表されたばかりだった。「文科省の資料提示はアンケートの内容ではまだ生ぬるい、足りないという姿勢の現れじゃないか」とみる法曹関係者もいる。
 実際、昨秋文科省が全校を対象に行ったヒアリングの際、「今回のアンケートで答えた削減案を伝えたところ、『もっと何とかならないか』と言われた。次の入試の志願者状況を見て考えなくてはいけないと思っている」と首都圏の法科大学院関係者が明かす。

「お金と時間がある人しか行けない」…理念崩壊
 そもそも、法科大学院は政府の司法制度改革審議会が平成13年の意見書で打ち出し、「司法が21世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすための人的基盤」の確立を目的に創設された。
 2-3年の修了者に司法試験の受験資格を与え、「『法の支配』の直接の担い手であり、『国民の社会生活上の医師』としての役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・能力の習得と、かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る」という教育理念で社会人経験者や法学未習の他学部出身者など多様な人材を求めた。
 一方で規制改革、自由競争の方針から設立申請を制限せず、16年に68校、17年には6校が開校、総定員は5795人となった。法曹人口増員をうたい、司法試験合格者は15年の約1200人から段階的に増やして22年で約3000人にするとされたが、それでも半数近くが落ちる計算だ。
 18年にはじまった新司法試験の合格率は、当初想定の7~8割を下回り48、40、33%と年々ダウン。地方の国立大、小規模の私立大などを中心に入学者、教育の質が問題視され始めた。
 こうした事態に、弁護士で司法試験、法科大学院受験指導の「伊藤塾」塾長、伊藤真氏は「当初の理念が崩れている。社会人経験者、他学部出身者は減り、お金と時間のある人しか行けない。(修了後5年以内3回の司法試験)受験回数制限も精神的負担。司法試験に落ちたら、大学院側に(就職の)手当てはなく放り出される。これでは誰も目指しませんよ」と話す。
 その結果、「優秀な人材が法曹界に入らなくなれば三権の一角が崩れる。司法権はある意味最大の国家権力。人を死刑にでき、政治家を追い落とすこともできる。だからこそ志高く、能力のある人が担わないといけない。票にも金にもならないが、全体を見られる政治家に真剣に考えてもらいたい」と訴える。
 すでに自民党の司法制度調査会や、法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会、民主党でも同様のプロジェクトチームが動き、一部では提言もまとめており、今後に注目も集まる。

低競争率の大学院に狭まる“包囲網”…対策は
 こうしたなか、伊藤氏は司法試験の受験資格から法科大学院修了の条件を撤廃する策をあげる。「個人で勉強する、受験指導校で学ぶ、法科大学院で学ぶ。人それぞれ。その後の仕事ぶりで法科大学院組が優位となれば存在意義もある」。さらに、「司法試験の合格者を司法研修所の代わりに法科大学院に入れ、修了すれば法曹になれる仕組みもいい」との案も。
 特別委の報告書では、競争倍率2倍未満の学校に早急な定員見直しを求めた。ただ、該当する法科大学院のひとつは、「定員の数は経営にも直結する問題で、数を減らせばそれだけいい人が入ってもこなくなる」と追い込まれそうだ。
 同じ定員削減案でも「各校単位でなく、(業界)全体で考えなくてはいけないこと」というのは、北海学園大学法科大学院の丸山治法務研究科長。「大学院の数を少数精鋭で中央集権的にするか、現状のまま各校が定員を減らすか。混乱が少ないのは後者」としたうえで、定員の基本を50人規模と提案する。
 「うちのように小さいところで20~30人、多くても倍の100人まで。それより多い大規模校が減らせば優秀な人材が他校に流れ、合格率が低かった学校もよくなる。入学者の質を確保した後、そこから教育面で自由競争になればいい」
 だが、“包囲網”はさらに狭まる気配だ。
 23年度から従来の司法試験に代わって導入される「予備試験」は、法科大学院修了以外で司法試験受験資格を得られる“バイパス”。法務省では「予備試験の合格者数や、予備試験組の司法試験合格率などはまったくわからない」というが、その合格率がよければ、法科大学院には脅威になりそうだ。
搾取種し責任も持たない…消費者への責任も
 評価機関による法科大学院の認証評価は今年度で一巡する。昨年度までに受けた68校の約3割、22校が「不適合」だったが、二巡目の重点評価項目として「修了者の進路(司法試験合格状況を含む)」が新たに加えられ、実績のない大学院はさらに厳しくなる。
 米国のロースクール認定基準には、司法試験に合格する見込みのない入学希望者や学生を入学させたり、在学させ続けたりしてはいけないという「消費者保護的な考え方」があるという。
 単純に比較はできないが、「このままでは、日本は(司法試験合格の)希望のない学生から搾取し、進路にも責任を持たないと言われかねない」(法曹関係者)。
 文科省の担当者は、現状について「全体としてはいい制度で、ロースクールになって昔の試験より合格率がよくなった学校もある。逆に厳しくなっているところと徐々に分かれてきているので…」と自由競争の行方を見定めている様子。
 各法科大学院の今後を左右する今年の新司法試験はすでに終了している。
 合格発表は9月10日だ。

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